はじめに
演劇部やアマチュア演劇の音響さんをはじめ、舞台音響や音響効果に興味のある人、普段あんまりしっかり音響機材に触れることのない人、やってみたい/試してみたい仕込みや機材の使い方がある人で、「せんだい演劇工房10-BOXとキーウィサウンドワークスの機材をいろんなふうに仕込んで、聴き比べたり、操作してみたり、まあ、楽しく遊んでみよう」という会を開こうとしています。
正式な開催を前に、お試し会をしておこう、と、第0回を先日開催しましたので、ご紹介したいと思います。
日程・会場
- 2025/2/19(水)15:00-20:00(大体1時間やっては10-15分くらい休む感じ)
- せんだい演劇工房10-BOX box-5
参加者
企画者の宮本さんと本儀の他にお二人
経過
準備

キーウィサウンドワークスで機材を出しまして、せんだい演劇工房10-BOXに到着。初回お試し回で、何もかも手探りです。とりあえず会場のレイアウトでもしてみようか、と、会場の半分くらいを、舞台の側、と見立てて、そちらに持ち込み機材を置き、反対側に卓を置くと良いかとテーブルを三台くらい出して、イスをちらほら置いてみました。
遊ぶ会なのだし、休憩にお茶とお茶菓子くらいあっても、と、紅茶、カフェオレ、ココアと小さい個包装の洋菓子アソートを持ち込んでみました。合間のおしゃべりも機材をさわっている時間と同様に楽しい、というのもよくあることですし。会場に入りやすい方が良いな、と、宮本さんに「音響機材を仕込んで遊ぶ会」と紙に書いてもらって、ドアの外に掲示してもらいました。「入退場自由」とかも書いてもらってもよかったかもしれません。
集合
予定時刻の少し前に、スタート時の全員が集合しまして、お名前と、今日やりたいことをざっくり、ホワイトボードに書いてみました。人が増えたら、演劇ワークショップでよくやるように、養生テープに名前を書いて胸元にでも貼ってもらうことにすると良さそうです。
会場機材借用
10-BOXになじむのも良いか、と、劇場機材を借りには皆で行きました。軽い倉庫見学の様相です。ミキサー2種類とスピーカー6台と、アンプとマルチケーブルとケーブル類とスタンド類と、と、たっぷり借りものをしました。10-BOXの音響機材は一式いくらで破格の安さなので、こういうおおらかなことができます。良いですね。
仕込み
機材もそろったし、まずはやりたいことをざっくり把握して仕込みを決めて、仕込んでみましょうか、と大まかな仕込みを決めて、作業に入りました。ラックケースの開け方や、XLRやスピコンの抜き差しの仕方やなにかも教え合いつつ。危なくないように、という部分は本儀が口を出しました。
スピーカーは、Sx300とSb122を奥LRにし、CBR12,CHR10,Blackline X8, S15, 111AD, VXSF3, VXS1 は聴き比べ用にセンター付近に並べたり積んだりしました。パワーアンプ5台をセンター奥に積み上げ、マルチ、卓(まずは01V96i)、を仕込み、卓内のパッチをし、ピンクノイズで回線チェックです。「卓の中のパッチ」は、デジタルミキサー特有ですし、各社各シリーズでいろいろなので、ここをクリアできると、とりあえずその卓を扱う第一歩目が大丈夫かな、という気が個人的にはします。01V96iの場合をご紹介しました。ピンクノイズは01V96iの、UTILITY内のOscillatorから。

続いてマイクを仕込み。スタンドに立て、卓内のパッチをして、ざっとゲインを取りつつ回線チェック。ゲインは、マイクの聴き比べをしても良いし、と、時計でいう1時くらいに最終的に揃えました。
お試し
ここまでの仕込みがひと段落しまして、マイクからの声が各スピーカーから出るようになりました。さて、参加者の皆さんの試したいことは、とホワイトボードを見てみると、早上がり予定でご参加の方から、オケを流して歌う場合の、返し位置について実験してみたいとのこと。それを先にすることにしました。01V96iとPCを繋いで卓内のパッチをし、Ableton Liveにカラオケデータを入れ、再生。
Sx300前LR(スタンド)にパラでSb122(床置き)を繋ぎまして、スタンドを使い切っていたのと舞台中ごろはスタンドを立てるほどスペースが取れないかもということとで、とりあえず返しSx300はSb122にのせて、返しの位置のパターンを試しました。
まずは舞台中ごろのLRに(参加者Tさん:ちょっとカバーエリアが心もとない? 本儀の感想:スタンド等でもう少し高く仕込むか、今の低さなら上向きに角度をつけるとか、やや奥向きにするとかでそこは解消しそう。でも奥向きにするとこんどは舞台前が厳しそう)
次に舞台前LRのすぐ奥あたりに、角材で少し角度をつけて。(Tさん:まずまずいけそうだし、舞台奥端とかもなんとかなりそう)宮本さんから、スピーカーを積んだらラッシングベルトで固定する話など。

解説と実演
もうお一方の、初心者な参加者にとっては、わけがわからなくなりそうだったので、卓内のパッチについてや、AUXのプリ/ポスト等についてフォローアップ解説をしました。プリフェーダーでバンドの返しのミックスを作る例や、ポストフェーダーでたくさんの系統から出していた音をチャンネルフェーダーで全系統一度にフェードイン/アウトする例を紹介しました。
プリ/ポストの切り替えの話から、演劇の音の演出で音像を変える話になり、舞台前で大きく鳴っていた音が、舞台上のラジオやテレビからの音に変化していく例を実演して紹介してみたりもしました。
宮本さんから、音像の設定をどこでどうやるか、の質問を受け、ミキサー内でバランスを決めた音像のパターンを作る例や、ミキサーは1入力1出力にして、Ableton Liveのリターントラックの出力を同じだけ作ってミキサーの入力に割り当て、バランスはすべてトラックからのセンドで作る(個々の音の音量操作はMIDIコントローラ等で別途やる)例を紹介したりしました。
アナログ卓(MG20XU)も仕込んで、参加者の環境に近い機材を仕込んで、そうした機材ならどうするか、やってみたり。

宮本さんから再生機器のバックアップの運用について質問を受け、お応えしたりもしました。同じミキサーにつないだPC2台で同じファイルを走らせておいて、異常が起きたらミキサーのパッチを変更(あらかじめ1ボタンでできるようにしておく)して対処する、とかです。
聴き比べ
58Sとe835Sのスイッチ音聴き比べ
手でマイクを持って、オンオフする音を返しのスピーカーで聴いてみました。本儀の感想:確かにe835Sの方がスイッチ音は控えめだが、無音というわけではないし、カフのフェーダーを上げ下げしてオンオフするのと違って、あからさまなことはあからさま。
e835Sとe845Sの指向性聴き比べ
口元にマイクを持って、手でマイクの角度を変えてみました。本儀の感想:e835Sの方が、角度が大きく変わっても音量と音質を維持してくれる。マイクに対する顔の向きが変わるようなときや、さほどシビアに音量を稼がなくて良いときや、SM58の代わりとしては、e835Sの方が適しているように思われました。
このあたり、録音しておけばよかったかもしれません。
スピーカー聴き比べ
YAMAHA CBR12
樹脂キャビネットの軽くてありがたいスピーカーですね。音は昔のヤマハの廉価版という感じで、価格帯や12インチのサイズ感から言っても納得の感じです。
YAMAHA CHR10
NEXO買収後のYAMAHAの10インチ。高音のテイストがけっこう変わって、目立つところは減り、自然になりました。低音は下の方まではもちろん出ませんが、締まっていて、だらしなくはないです。お値段とサイズの割にはかなり良いです。
Martin Blackline X8
キーウィサウンドワークスでいちばんよく使う8インチ。高音まで上品で、サイズの割に意外なほど低音も出ます。荒れたところがごく少なく、好きな傾向の音です。以下、ぐっと小型のスピーカーです。ClassicPro CubeMini4インチと1.3インチのコンプレッションドライバーの同軸。低音はサイズなりでもちろんさほど出ませんが、その他のまとまりの良さはお値段の割に本当に見事です。
BOSE 111AD
約4.5インチ(11.5cm)のフルレンジドライバーひとつ。101MMよりちょっと大きいです。だいぶへたってきてはいます。繊細な音は望めません。
YAMAHA S15
約4.7インチ(12cm)ウーファーの2Way。111ADよりもずっと繊細で落ち着いた音がします。
YAMAHA VXS1
握りこぶし大のスピーカー。もちろん低音は全然出ませんが、硬めの良い音です。小さいので、あちこちに仕込んで虫の声とか葉擦れとか、立ち位置近くに仕込んでスマホの着信音とか、使いでがあります。
ばらし
順序や方法や注意点など話したり話されたりしつつ、ばらしました。


ケーブルの巻きの大きさが、保管方法や管理者によって異なるので、借りるときに見ておく、というのは要注意ですね。借りたものを返すときは、自分の手癖で巻かないこと。
フィードバック
参加者から感想や改善点や提案をいろいろ伺いました。
解散
参加者の所感
・楽しかった。ミキサーをいじったり、スピーカー聴き比べが特に。CDプレイヤーに凝ろうとした時期があったり、ショップで聴き比べたりするので。次以降は、模擬的に、台本と音とで短いお芝居をやってみるのとかも良いのでは。
本儀の所感
日常、仕事の場ではあまりできない遊びができて、とてもよかったです。思い付きでお持ちしたお茶とお茶菓子が好評でした。あった方が良いですね。休憩時間に参加者同士のおしゃべりがおきるならそちらが本道、くらいに思っています。今回はちょっと本儀が主導しすぎたかもな、と感じております。休憩時間の取り方を一律に決めたこととかも含め。もっと人が増えたら、思い思いに休憩したり、複数のシステムで思い思いのことをする時間があっても良いなと。宮本さんを含め参加者から、本儀が質問を受ける回数が多く、「本儀から皆さんへの講座」みたいになる時間が多くなりましたが、これは宮本さんと僕以外の参加者が初心者お一人である時間が長かった、というのも大きな要因かと。それでも、参加者同士で教え合ったり、話したりする時間がちゃんとあって、よかったです。それが増えていくと良いと思います。第0回の後に宮本さんから出た「前回の公演で困ったこと、悩んだこと、うまくできなかったこと」を持ち込んでもらう、という案はとても良いと思います。全体に、宮本さんの広報の文面は、柔らかくてそこが良いと思います。僕、なんだか固くなりがちでして。
使用機材
せんだい演劇工房10-BOX機材
- EV Sx300 x4
- EV Sb122 x2
- YAMAHA P3500 x2
- YAMAHA P2500 x1
- Canare 16chマルチ 1式
- Shure SM57
- スピーカースタンド x6
- K&M 210 (標準ブームマイクスタンド) x3
- YAMAHA MG20XU
- ケーブル類ほぼすべて
キーウィサウンドワークス機材
- YAMAHA 01V96i
- YAMAHA CBR12
- YAMAHA CHR10
- Martin Blackline X8
- YAMAHA S15
- BOSE 111AD
- CLASSIC PRO CubeMini
- YAMAHA VXSF3
- YAMAHA VXS1
- Shure SM58S
- Sennheiser e845S
- Sennheiser e835S
- Sennheiser e945
- audio-technica AE6100
- Mackie MDB-USB
- Ableton Live入りPC
参加者持込
- Shure Beta58

使わなかったけれどお見せはしたキーウィ機材
- Behringer X-Touch
- Korg nanoKONTROL Studio
- audio-technica Pro42
全然使わなかったキーウィ機材
- Midas M32R LiveRME Fireface UC
なんとなく置いておいた書籍
- 『舞台技術の共通基礎』
- 『響きの科学』
- 『オペラと音響デザイナー』

関連ページ等
企画 宮本一輝 Twitter(X)@itsuki_re
共同企画 本儀拓 Twitter(X)@mt_tak Bluesky@mttak.bsky.social
企画協力 キーウィサウンドワークス Webサイト Twitter(X)@kiwi_sound Bluesky@kiwi-sound.bsky.social