ホグワーツ魔法魔術学校の湖、主に巨大イカについて

 ハリー ポッター シリーズを読んでいて、ホグワーツ城下の湖(黒い湖”Great Lake”)には巨大イカがいる、という記述を読みました。おだやかな性格で、のんびり湖面を泳ぐのが見られたり、湖に落ちた生徒を戻してくれたりするそうです。私たちのよく知っているイカ(というかタコなども含め頭足類全般)には、淡水に生息する種は知られていません。さすが魔法生物。

 と、思ったのですが、塩水の湖という可能性があります。海水なみの塩分濃度の湖だった場合、私たちの知っているイカが住めます。

 どっちなんでしょう…。気になったので、あれこれ調べてみました。結果、僕は、やや淡水説寄り、です。

大別して

  1. 湖の塩分濃度が高くなるのはどういう場合か
  2. 巨大イカ以外の生物
  3. 巨大イカについて

と見ていきます。

1.湖の塩分濃度が高くなるのはどういう場合か

 広義の塩湖が生じる条件に、ホグワーツ城の「黒い湖」が当てはまるかどうか、が、手掛かりになるかもしれません。私たちマグルのよく知る世界では、

  1. 河川からの流入があるが流出がなく、もっぱら蒸発によって水が減り、塩分は残留し、塩分濃度が濃くなる場合(狭義の塩湖)
  2. 岩塩を豊富に含む地質、等のため、流入する地下水の塩分濃度が高い場合
  3. 海とつながっていて海水の流入がある場合(汽水湖)

が、主に、塩水の湖が生じるケースのようです。「黒い湖」につきましては、

「1.河川からの流入があるが流出がなく ~」については、黒い湖から流れ出る川は…ありましたでしょうか…。確認できた場合、1.は違いそうです。

「3.海とつながっていて ~」は、ホグワーツ城が山の中ですので、海水が昇ってくるとは考えづらいように思われます。ただ、実は海の近くの低い山ではないのか、と問われますと、違うと断言はできません。映画の空を飛ぶシーンで周囲が見えたとき、ずっと山や森で海が見えなかったような、ということはわりと海から距離があるのでは、とは思われます。

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』での三大魔法学校対抗試合の際、ダームストラング専門学校の船が黒い湖から現れたり去ったりしたこと、は、黒い湖が海とつながっている証拠とは言えません。彼らには魔法があります。つながっていない海から湖(や湖から湖)に、船ごと転移する魔法が、無いとは言えません。

 いずれにしろ、「2.岩塩を豊富に含む地質 ~」の可能性があります。

2.巨大イカ以外の、黒い湖の生物

 黒い湖の、他の水生生物はどうでしょう。水中人マーピープル)や水魔グリンデロー)がいます。水生植物も繁茂(『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』の映画で)していました。

 水中人については、海にもいることは間違いない(前掲(リンク)の記事によれば、ニュート スキャマンダーが、ギリシャのマグルの伝承のマーメイドは水中人のことだと言っているそうです)のですが、淡水にはいない、とも言えないようです。

 水魔については、生息地が「湖底の水草の中」とあります(https://harrypotter.fandom.com/ja/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AD%E3%83%BC)ので、淡水が大丈夫な生き物であることは間違いないようです。

 ただ、「小魚や藻類など小さな海の生き物を主食とする。」とあるのが難しいところで(原語にも”sea”とありました)、完全にこれを信じるなら、海に近い湖に住み、海に食事に出る、という暮らしをしている、ということでしょうか。

 シェフィールド(海から100km近く離れた街)にいる、ともありますので、”sea”は何かの間違いではないかと思われます。若干タコっぽい見た目ですが、淡水が大丈夫のようです。まあ、口の位置とか何もかもタコとは違いますので、それは気にしなくてもよさそうです。

 映画『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』の三大魔法学校対抗試合の際、ダームストロングのビクトール クラムが上半身をサメに変身していましたが、しばらくの間なら淡水が大丈夫なサメがいる(オオメジロザメなどはかなり長時間にわたって淡水で活動します)こと、とっさのことで考えが及ばなかったのかもしれない(どうせなら尾びれもサメになったら移動が速くてよかったのでは。)ことから、水が淡水か海水かを判断する手がかりとしては弱い、と思われます。

 水中の植生については、残念ながらちょっとわかりかねます。水中植物に詳しい方がいらして、何かお分かりのようでしたらぜひご一報ください。(もっとも、近縁の魔法生物であってマグルによく知られた種ではないのでは、という可能性が常にあります。)

 映画で見る限り、周囲の植生が、湖のかなり近くまで、周囲の森の植生と同様のものである、というのは、湖が淡水である傍証になりえるかもしれません。(あるいは映画のロケ地の問題かもしれません、とかをどこまで持ち出すべきか、というのは、無粋ながら難しい問題です。)

3.巨大イカについて

 「巨大イカ」は原語ですと”Giant squid”で、これは私達マグルの間では「ダイオウイカ」の英名です。が、魔法の世界の慣習と違うことがあり得ますし、本当にただ「ダイオウイカが湖にいる」、となると、塩分濃度以外にも、水圧ですとかの問題が出てきます。なにがしかの魔法生物であることは間違いなさそうです。

 Harry Potter Wikiには、この“Giant Squid”の項目があります(日本語版には無いようです)。その”Behind the scenes”(「背景」)の項目にはこうあります。

True Giant Squids (genus “Architeuthis”) are deep-sea-dwelling creatures and can not live in fresh water such as inland lochs in Scotland. It would not be able to stand the sunlight, pressure, lack of salinity of the water, the space or the lack of food. At one point during the books it is fed bread, which it would not be able to digest. Giant Squids also have very tender skin that would break if they were tickled by a stick, as the Weasley twins did. However, it is possible that the Hogwarts Giant Squid is a magical subspecies, similar to, for instance, what Kneazles are to mundane cats, and has different tolerences.

“Giant Squid” Harry Potter Wiki https://harrypotter.fandom.com/wiki/Giant_Squid

 「実際のダイオウイカ(Architeuthis属)は深海に生息する生き物であり、スコットランドの内陸の湖などの淡水に生息することはできません。日光、圧力、水の塩分の不足、スペースや食物の不足に、耐えることができないでしょう。本のある時点でパンを与えられていますが、ダイオウイカには消化できません。ダイオウイカはまた、ウィーズリーの双子がそうしたように、棒でくすぐられると、壊れてしまう、非常に柔らかい皮膚を持っています。ただし、ホグワーツ巨大イカは、たとえば、普通の猫に対するニーズルのような、魔法の亜種であり、耐久力が異なる可能性があります。」

とのことです。

 ここではっきり「スコットランドの内陸の湖などの淡水」とある根拠がどこにあるのかは、今のところわかりません(お分かりの方、ご教示願えれば幸いです)。ホグワーツ城と黒い湖が、内陸にある、というのも根拠を知りたいところです。「スコットランドの内陸の湖なら淡水だ」という常識や、「スコットランドの内陸には塩水の湖は無い。」という調査結果があるとしても、それが魔法による隠ぺいの結果でないとは言えません。もし、原作や近い関連作中に「黒い湖(”Great Lake”)が淡水である」という記述があれば、もちろん単純にして強力な根拠になるのですが。今のところ見つけ出せていません。

最後に

 映画を全作観て、『~賢者の石』『~秘密の部屋』『~アズカバンの囚人』を最近読んだ(読み直した)状態で、オンラインで手に入る資料をあたったところでは、こんな調査結果です。

 決定的な証拠は今のところありません。僕個人は、もし黒い湖に海水並みの塩分濃度があったら、森があんなに(映画『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』など)湖のそばまで迫らないだろう、と思っています。

 巨大イカが元気で長生きしますように。


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